1.相続にまつわるトラブル事例
①家族同士で十分な協議を行わずに、所有者が亡くなってしまった場合
●相続人同士で遺産分割を巡って意見が合わず、深刻なトラブルに発展することがあります。
●特に下記のようなケースでトラブルが多い傾向にあります。
- 相続財産は、実質「実家」のみである。現金・預貯金・金融資産はほとんど無い。
- 長男が実家に住んでおり、実家は長男が当然自分が相続するものと考えている。
- 亡くなった親の介護を特定の相続人のみが行なっていた。
- 特定の相続人のみが、知らぬ間に生前贈与を受けていた。
- 亡くなった親のお金の管理(通帳・印鑑を持つ等)を、特定の相続人のみが行なってきた。
- 再婚を経験したり、養子がいる。
- 多額の借金がある。
※借金などの負の資産も相続対象。連帯保証人の地位なども相続対象。
上記は一部の例であり、相続人に特に悪意が無かったとしても、仲の良かった兄弟同士間でトラブルに発展することもあります。
●相続財産が少なくても、トラブルになるケースは多いです。
令和6年に家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件数15,379件の内、遺産額5,000万円以下の事件が76%を占めていました。1,000万円以下でも35%とかなりの割合を占めています。
また、遺産分割事件数は最近20年で1.7倍に急増しています。
よって、「うちは相続財産が少ないから、別に揉めたりしない。」とは言えなくなってきています。
●遺産額が少ないケースでは、遺産が現金・預貯金ではなく、大部分が不動産(実家)であることがほとんどです。
不動産は物理的な分割が難しく、トラブルを生みやすい遺産と言えます。

②遺言書があるが、偏った内容である場合
●相続人が複数人いるにも関わらず、特定の相続人のみに相続させる旨の内容が書かれているケースもあります。
例として、
- 長女に全財産を相続させる。
- 所有する不動産は、全て次男に相続させる。
- 代表を務める会社の株式は、全て長男に相続させる。
- 次女には一切相続させない。
●上記のような例に該当しても、被相続人が生前に協議して相続人に周知しておけばトラブルにはなりにくいですが、知らぬ間に遺言書が書かれているとトラブルになりやすいです。
●①と同様、「亡くなった親の介護を特定の相続人のみが行なっていた。」や「特定の相続人のみが、知らぬ間に生前贈与を受けていた。」などの事情があると、よりトラブルに発展することが多いです。
●遺言書があったとしても、「遺留分」を主張することができます。
「特定の相続人に全財産を相続させる」旨の遺言書があったとしても、他の相続人も「遺留分」として一定割合の遺産を相続できる権利があります。
遺産の最低保証といった意味合いです。

【遺留分の権利者】
- 配偶者
- 子ども、孫などの直系卑属
- 親、祖父母などの直系尊属
※兄弟姉妹には、遺留分の権利はありません。
【遺留分の割合】
| 配偶者と子どもが相続人の場合 | 相続財産全体の2分の1 |
| 直系尊属(親など)のみが相続人になる場合 | 相続財産全体の3分の1 |
(配偶者と子どもが相続人の場合の遺留分割合)
| 配偶者の遺留分割合 | 4分の1 |
| 子どもの遺留分割合 | 4分の1 |
※子どもが2名の場合は、それぞれ8分の1ずつです。

【遺留分侵害額請求(遺留分滅殺請求)】
- 遺言書の内容が遺留分を侵害する内容になっていたとしても、遺言書の内容は有効です。
よって、「遺留分の遺産は、しっかりともらいたい。」と思っていても、何もしなければ遺言書の内容通りの相続となってしまいます。 - そこで、「遺留分侵害額請求」という手続きが必要となります。
遺留分を侵害された権利者が、侵害者に対して遺留分相当額を金銭で支払ってもらう手続きです。 - 遺産の大部分が不動産で占められる場合、侵害者は新たに現金を準備して侵害された権利者へ支払う必要があります。
もし手元に現金が無ければ、不動産を売却するなどして現金を準備する必要があり、侵害者にとっても急な対応を迫られる事態となってしまいます。 - そのため、遺留分侵害額請求をきっかけに親族間でトラブルに発展する可能性もあるため、やはり遺言書作成の時点で遺留分を考慮した方が無難です。

③所有者が痴呆症を発症してしまった場合
●これは相続が発生する前の話になりますが、将来の相続人にとってトラブルになりやすい状況です。
●所有者が痴呆症等の発症によって、物事を判断する意思能力を失った状態になると、不動産売却などを行う際は「成年後見人」の選任が必要となります。
●成年後見人の選任に当たっては、家庭裁判所での手続きが必要となり、申し立てから少なくとも2ヶ月〜3ヶ月ほど時間を要します。
※2ヶ月〜3ヶ月は目安であり、それ以上に時間を要することも多いです。
●選任される成年後見人は親戚ではなく、弁護士や司法書士などの第三者であることが多く、報酬として月額1万円〜6万円ほどが必要となります。
報酬の支払いは被成年後見人(所有者本人)が亡くなるまで続き、途中で辞めることはできません。

●そのため、成年後見人の選任は気軽に行えるものではなく、成年後見人の選任をするか否かの判断においても、家族で意見が相違するケースも出てきてしまいます。
●成年後見人の選任ができたとしても、被成年後見人(所有者本人)が居住する自宅を売却する場合は、家庭裁判所の許可が必要です。
成年後見人は被成年後見人の保護を行う立場にあるため、自身が居住する住宅を失うことには慎重な判断が求められるからです。
●成年後見人の選任に二の足を踏んでいると、所有者本人の医療費や介護費用を家族の誰かが立て替え払いすることもあるでしょう。
それが後に発生する相続時に、トラブルの種になる可能性もあります。
●不動産や会社株式の相続についても、所有者本人の意思を確認することは困難となります。そのため、家族がそれぞれ異なる主張を展開して、トラブルに繋がることもあります。
相続に当たっては、残念ながら親族間でさまざまなトラブルが起こり得ます。
次の章では、トラブルを未然に防ぐための方法をご紹介してまいります。

2.トラブルを未然に防ぐために
●相続に当たってのトラブルを未然に防ぐために下記のような方法があります。
(1)ご生前にご家族としっかりと協議を行う。
- やはり、これが基本です。お元気な内にご家族と直接協議を行う場を持つことが大切です。「まだまだ、元気だから」、「死ぬのを待たれるのは嫌だ」といったお考えもあるでしょうが、ご家族のためには早期の協議を行うべきです。
(2)遺言書を作成する。
- 遺言書は被相続人の意思を明確にする、非常に有効な相続対策です。
遺言の読み方は「ゆいごん」、「いごん」どちらでも良いです。 - 相続人に該当するのは基本的に法定相続人ですが、遺言書によって法定相続人以外の人を相続人とすることもできます。
例えば、息子の妻などです。 - 遺言書は3種類あります。
①公正証書遺言
②自筆証書遺言
③秘密証書遺言

| 種類 | 【公正証書遺言】 | 【自筆証書遺言】 | 【秘密証書遺言】 |
| 書く人 | 公証人 | 本人 | 本人 |
| 作成の仕方 | 公証人が代わりに作成 | 本人が自筆で作成 | 本人が作成 |
| 承認の要否 | 2人以上 必要 | 不要 | 2人以上 必要 |
| 保管場所 | 公証役場 (正本は本人) | 本人 | 本人 |
| 裁判所による検認 | 不要 | 必要 | 必要 |
| 費用の要否 | 必要 | 不要 | 必要 |
| メリット | ●無効となる可能性が低い ●紛失のリスクが無い | ●作成が簡単 ●費用をかけずに作成できる | ●内容を秘密にできる |
| デメリット | ●承認が2人以上必要 ●費用がかかる | ●無効となる可能性がある ●紛失や偽造などのリスクがある | ●証人が2人以上必要 ●費用がかかる |

(3)家族信託を活用する。
家族信託とは、保有する不動産や預貯金等の資産に関し、その管理・処分を家族・親族に託す仕組みです。
意思能力を失って成年後見人の選任を行うという事態に対し、家族信託は本人の意思能力がある内に、本人の意向を反映させて資産の管理・処分方法や受託者を決めるという前向きな手段です。
一旦、本人が意思能力を失ってしまった場合は、家族信託を活用することはできません。
「家族信託の契約を締結する」という契約行為ができなくなるからです。

(家族信託が有効なケース)
●本人の意思を明確にしたい。
意思能力を失ってしまうと、本人の意思を家族に正確に伝えることは難しくなります、家族信託を活用すれば、自分自身の意思をしっかりと家族に伝えることができます。
●相続発生後のトラブルを減らしたい。
家族信託の契約内容として、特定の財産の相続を特定の相続人に指定することができます。
特に不動産は物理的な分割が難しい遺産ですので、事前に相続人を指定しておくことで、相続人同士のトラブルを未然に防ぐことができます。
このように、家族信託には遺言の機能も備わっています。
●将来の介護に備えたい。
介護が必要となってその介護費用が必要となった際、本人名義の資産から支払いが行えるよう、その処分を行う家族を指定することができます。
●二次相続のことも心配。
二次相続とは、最初(一次)の相続人となった配偶者が亡くなり、その子どもが二次として相続人となるようなケースです。
子どもが相続人となる場合は、「配偶者控除」という税額控除が無いため、相続負担が大きくなることもあります。
そのため、家族信託を活用して二次相続時の相続人まで指定することで、二次相続対策を行うことができます。
このように、相続にまつわるトラブルを未然に防ぐ方法は複数ございます。
遺言書作成や家族信託など専門的なお手続きを進めるためには、弊社の様な不動産会社だけでなく司法書士・行政書士・土地家屋調査士・税理士・弁護士等、さまざまな専門家からのお手伝いが必要となります。
いずれの専門家も弊社よりご紹介可能ですので、是非、弊社へご相談ください。

3.一般的な不動産相続の手続き


- 上記の通り、相続には複数の期限があり、最終的には10ヶ月以内に相続税の申告・納付までを行う必要があります。
- そのため、相続人が遠方にいたり疎遠になっていたりするケースでは、遺産分割協議に時間を要してしまいます。
- 遺産分割協議が折り合わずに期限である10ヶ月以内に相続税の申告を行えなかった場合、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課せられてしまいます。
- よって、スムーズな相続手続きを行うためには、遺産分割協議を円滑に行う必要があります。

●不動産の遺産分割の仕方は、以下のような複数のパターンがあります。
②換価分割:不動産を売却して、売却代金を分割する。
③代償分割:特定の相続人(長男など)だけが相続し、他の相続人にはその代わりとなる金銭を渡す。
④共有分割:不動産を相続人で共有する。
- 現物分割は、そもそも不動産が複数ある場合にしかできない分割方法です。 選択可能なのは資産家など限られるでしょう。
- 換価分割は、売却代金を相続で均等に分けるとトラブルになる可能性が低く、現実的な分割方法と言えます。ただ、売却に時間がかかることもあるため、売却代金を受け取るまでに時間を要する可能性があります。
- 代償分割は、特定の相続人(長男など)が代償金として現金を準備できる場合にだけ、選択可能な分割方法です。
- 共有分割は、最もお勧めできません。相続人で共有状態にしてしまうと、その後、売却や賃貸、建物解体を検討する場合、共有者全員の承諾が必要となってしまうからです。共有者が亡くなると、さらに共有者(相続人)が増加してしまい、意思統一がより難しくなっていきます。

不動産の相続でご不明な点等ございましたら、
是非、弊社「株式会社いのくち不動産相談」へご相談ください。

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