近年、「相続放棄」が増加の一途

【相続放棄が増えている。】
近年、「相続放棄」が増加の一途を辿っているようです。

<家庭裁判所の相続放棄 受理件数>
●2019年:22万5,416件
●2020年:23万4,732件
●2021年:25万1,994件
●2022年:26万497件

「相続放棄」とは、親族が亡くなった際にその遺産を意図的に受け継がないことです。
相続放棄は相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があり、この手続きを行わないと単純承認したことになります。
単純承認とは、「プラス・マイナスの遺産いずれも相続することを承認しました」という意味です。

相続放棄する理由の多くは、
「預金・不動産といったプラスの遺産より、借金というマイナスの遺産の方が多いため」
です。

相続はプラスのものだけを受け継ぐというイメージがありますが、実際には金融機関からの借金などもそのまま受け継ぎます。
住宅ローンの場合は、団体信用生命保険に加入していれば、死亡保険金の受取りによって借金は残りません。

その一方で、アパートローンや事業性の借入は団信に加入していないことが多いため、借金はそのまま相続人に受け継がれることになります。
もちろん、故人が個人としてではなく、法人として借入を行っている場合は、借金をそのまま受け継ぐわけではありません。
収益物件を複数保有している場合、個人ではなく法人として保有しているケースも多いですね。
ただ、その法人の代表者の立場を受け継ぐことになれば、結果的に法人として借金は引き継ぐことになります。

また、最近は相続放棄の理由も変わってきているようです。

①亡くなった親族と疎遠になっている。
②遺産分割協議に当たって、相続人同士でトラブルになることを嫌う。

上記のような理由が、借金が残っていることに加えて、相続放棄する理由として増加傾向にあります。
私が最近、不動産売買を担当した物件においても、借金を返済しても十分にプラスとなるはずなのに、相続放棄しているケースがありました。
マンションの室内には、故人がほぼ生前時のまま家財道具や残っており、今でも住んでいるお部屋と錯覚するほどでした。
親族と疎遠だったことが推測できます。

高齢化や核家族化が進んでいくと、このようなケースは今後、さらに増加していくことでしょう。
やはり、元気なうちに相続について親族と話し合いを行い、遺された人が困らないようにした方が良いですね。